2006年10月19日木曜日

夢の中で

ふと、やはり僕はまともな社会生活を送ることができない人間なんじゃないかという気がする。


そんな漠然とした予感に顔を上げると、いつのまにか周囲は濃い霧に覆われていた。
濃いミルク色のそれを吸い込み、僕はかすかに甘い香りを感じる。
何も見えず、何も聞こえない。
ただ心臓の音だけが、僕の中でうつろに響いている。
――とく、とく、とく。

僕はゆっくりと深呼吸をして、息を止める。
そして、耳を澄ます。
やがて聞こえてくる音はただ一つ。
狂おしいほどに力強い拍動。
――どくん、どくん、どくん。

静かに息を吸う。
もはやそこに心地よい香りはない。
霧は身体にまとわり付き、衣服をじっとりと濡らす。
そして、再び僕の中にうつろな音が響き始める。
――とく、とく、とく。


かくして今日もマーチは続く。

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