2005年10月18日火曜日

悪夢

気がつくと僕は実家の庭にいた。
ふと違和感を感じて周囲を見渡すと、家を建て替える前の古い風景が広がっていることに気付く。
たぶん、ここはもう20年近く昔の世界だ。

庭には不思議なものが立っている。
葉が一つもない枯れ果てた木のようにも見えるが、よく観察すると自然の木とは全く異質なものであることがわかる。
表面は全体にクリーム色。
プラスチックのように無機質な滑らかさをもち、浅い溝がいくつも上下に長く走る幹はまるで波立っているかのようだ。
幹から伸びる枝は、巨大なバラの棘を思わせる短く鋭い円柱状になっている。
地上部分の太さは直径15センチ程度だが、先端までの高さは20メートル以上あるだろう。
「木」 の根元には祭壇が設けられ、10人ほどの男女が周囲をかこんでいる。
その中には僕の母親の姿もあった。

僕は直感的に、これから何らかの宗教的な儀式が行われようとしていることに気付いた。
急いで母親に詰め寄り、儀式をやめるように説得する。
しかし母親は僕の言葉を全く聞き入れようとしない。
僕は、新興宗教に取り込まれてしまったような母親の姿に腹を立て、近くの納屋から薪割り用の斧を持ち出した。
制止しようとする人々を振り払い、祭壇や奇妙な 「木」 に斧を叩きつける。
「木」 は斧を振るうとプラスチックが割れるように次々と砕け、やがて根元からゆっくりと倒れた。


…。
……。
………。

ふと、目が覚めた。
熱があるらしく、ひどく寝汗をかいていて身体がだるい。
ぼんやりとさっきまで見ていた夢のことを思い出す。
奇妙な 「木」 のこと。衝動的な破壊のこと。そして 「木」 を倒した後のこと。

そうだ。
あの奇妙な 「木」 を倒したあと、何かとても恐ろしい出来事を体験したはずだ。
しかし、「木」 を倒すまでの夢ははっきりと覚えているのに、そこから先には霧に包まれたような恐怖のイメージがあるだけで、何が起こったのか全く思い出すことができない……。

急に暗闇に包まれていることに恐怖を感じ、慌てて枕元のPHSに手を伸ばした。
折りたたみ式のボディを開いて時刻を確認しようとするが、なぜかディスプレイが表示されない。
焦ってあちこちのボタンを押しているうちに、ようやくPHSの電源がOFFになっていることに気付いた。
バッテリーはまだ十分にあるのに、なぜ電源がOFFになったのだろう。
僕が寝ぼけていつの間にか電源を切ったのか、それとも……。

奇妙な出来事にふと夢の中の恐怖のイメージが呼び起こされ、身体の底からぞわりとした震えが這い上がってきた。

3 件のコメント:

  1. 実にクトゥルー的ですね。
    夢を思い出したら別の(ある意味すばらしい)世界への旅立ちが待ってますよ。

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  2. 最近みんなの TRPG 熱が冷めてますが、
    「秋の夜長の恐怖」とでも題してクトゥルフの
    セッションやりたいなーと思ってます。
    みんな忙しそうだけど、参加できるかなぁ……。

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  3. 中の人のSUNが無くなる前に
    ぜひ、演りましょう~

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